感想:ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~
著者:J・D・ヴァンス
★★★★★
アメリカ副大統領ヴァンス氏の自伝。久々のあたりな本だった。この本を書いたときはまだ弁護士だったけど、今共和党の副大統領まで若くして上り詰めたのがよくわかる。ラストベルの貧困家庭で生まれ育ち、海兵隊での軍経験をし、イエール大学のロースクールに入り、弁護士になるというアメリカンドリームを実現しつつも、自分の故郷の環境と今の環境を比べ、課題感を日ごろから感じている。経歴、ストーリーが無敵すぎる。社会資本の重要性に言及し、自分は文化的な移民(貧困層からエリート層)と表現している。
アメリカの人種差別は有名だけど、ラストベルトの労働者階級(大卒未満)の白人は、同じ白人でもいわゆる特権階級の白人とは違う、貧困に苦しむリアリティが描かれている。もちろん著者がその環境で生まれ育ったからだ。最後の解説がよくまとめられている。
ヴァンスは家族や隣人として彼らを愛している。だが、「職さえあれば、ほかの状況も向上する。仕事がないのが悪い」という彼らの言い訳を否定する。社会や政府の責任にするムーブメントにも批判的だ。 というのも、ヴァンスは自分がアルバイトしているときに、職を与えられても努力しない白人労働者の現実を目撃したからだ。遅刻と欠勤を繰り返し、解雇されたら、怒鳴り込む同僚もいた。教育においても医療においても、政府の援助を受けずには自立できないのに、それを与える者たちに牙をむく隣人たちも見てきた。そして、ドラッグのための金を得るためなら、家族や隣人から盗み、平気で利用する人たちも。 本書に出てくる、困難に直面したときのヒルビリーの典型的な対応は、怒る、大声で怒鳴る、他人のせいにする、困難から逃避する、というものだ。
J・D・ヴァンス. ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~ (光文社未来ライブラリー) (Japanese Edition) (p. 351). 光文社. Kindle Edition.
ただ一番驚いたのが最初のほうにあった一説で、世界で一番豊かな国なので、安定した仕事は普通にあるみたい。ただ若者は労働を嫌悪してしまっている。そこの背景には、ドラッグが蔓延するような貧困環境が影響しているのか、そのつながりについては著者も不明なようだ。
そんなこんなにすごい人が、政治家で国を動かせれる立場まで来ても、結局、どうすればいいかわからないっていうのは結論ということ。そりゃそんな簡単に貧困を解決できたら何も争うことはないものね。まあこういうストーリーを持った人物がどう今後のアメリカに影響を与えるかはすごく気になるね。
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