感想:田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
著者:渡邉格
★★★★☆
非常に楽しく読めた。が、後半の作者の思いには残念ながら共感できなかった。
タイトルにあるように腐る経済を著者は田舎のパン屋を通して実践している。腐る経済についての説明は本書を読んでほしいが、簡単に説明すると、お金が自己増殖していく資本主義の逆である。要するに自分で生産手段を持ち、利潤を出さずに、労働力を買いたたかないということ。資本主義も破綻が近いことが叫ばれる昨今だが、じゃあどうすればいいのか?の1つの答えなのかもしれない。
実際のところ、結果的には、地産地消モデルで、人工的に作られたイースト菌を使うのではなく、天然の菌を育てて発酵させたパンを作るらしい。その分手間暇も原料費もかかるので商品価格が高くなってしまうが、うまく回っているらしい。こう書くと成功するには分の悪いビジネスに見える…。1つ350円のパンの価値を見いだせるのか。あまりにも田舎すぎるのが要因な気がしてきたぞ?
科学者技術者として、最後のほうの自然栽培の良さの理由は受け入れがたいものがあったし、それなりの考察が出来ているのにもかかわらず、定性的な判断で終わっているのは気になったというか残念に思った。ガチガチの理系人間なので…。
一方で、前半のマルクスの資本主義についての説明は素人にもすごく分かりやすく、この世の中(資本主義社会)の商品価値や労働価値については目から鱗だった。アベノミクスの目標の1つであるデフレ脱却や経済循環などのベースにある考えがそこにはあった。
この世の先を読むと、科学技術発展により生産性の向上=労働価値の低下=商品価値の低下が起きる。単純な労働者は搾取され、お金を持っているものはより恵まれていく。やっぱお金を稼がないとなぁ・・・。
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