るむろん

Android/生活/旅行/英語/書評…適当に書いていきます

感想:年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

   

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

著者: エンリコ モレッティ 、訳:池村 千秋

★★★★☆

長かった…。Kindleで読んでると本がどれくらい分厚いか分からないのが若干のデメリットな気がしますね。最初読み終わるまで6時間とか出ててまじか?って思ってたら本当にそれぐらい読むのにかかってしまった。内容はすごくよかったけど、あまりにも長いと飽きがきてしまいますね。

アメリカでシリコンバレー近くの高卒の人の年収が、昔の工業都市で今は衰退しているところの大卒者の年収を上回っている現象が起きていることをベースに、その根拠を色々な視点で考察している内容。東京と田舎のアルバイトの時給が違うことにも似ているが少し違う。

スポンサーリンク

なんでそんなに場所による収入格差が生まれるかというと、栄えている都市には、企業が人がモノが、と色々集まり雇用が増え、消費も増え経済の好循環がまわっていくから。特にイノベーション産業、ハイテク産業、昔でいうところの自動車産業で今ではIT企業やApple、Microsoft等、がこの好循環を生む際のキーとなる要素らしい。

その理由として、自動車産業等の製造業の専門職が1人増えても町の雇用(外食や美容師等)は1.5人程度しか増えないが、これがIT系の専門職の雇用だと、1人増えることによって都市の雇用が5人も増える層だ。これが飛躍的に都市を強くしている。

もう1つ、驚いたころは、IT企業というと、工場も必要なく、アイディアとパソコンだけあればいいので、どっか特別な場所に集まらなくても、今のインターネットでつながる時代には、在宅勤務等様々な勤務形態をとれると思っていて、ITが栄えると、人の一極集中は薄れるのかと思っていた。しかし現実は、シリコンバレーやシアトルを代表するように、ITのほうが人がどんどん集積されていっている。この集積効果というやつが、すごく重要らしい。特に専門的な知識を持って人同士が対面して交わることによって、文字通りイノベーションが活発になるらしい。

よくいう周りの環境に流されるのと同じで、すごい人が周りにいれば刺激されて、よりよくなっていく。人的資本がアイディア勝負で人的資本が最重要なIT系では、その能力を高めるため、集積せざるを得ないような現状みたいだ。

この集積効果が集積効果を呼んで都市の経済はどんどん潤っていき、逆に集積に失敗したところとは格差がどんどん広がっていく。さて、どうしたら勝ち組の都市になれるのか?

という問いに対して、著者は、有力なIT企業の誘致(税制優遇等)か、大学などの人材側を集めるかの2点について考察していたが、どちらも現実的には厳しそうだった。結局、IT業界は何がアタルかわからないところが多く、行政として投資しにくいみたい。

 

さて、日本に置き換えてみると、今の東京一極集中に歯止めがかからない理由の1つに、この集積効果があることがわかった。昔の中国のような強烈な経済特区なんて今更日本にはできないだろうし、本当に自分が成功者になるには、東京という都市に住む以外の選択肢はなさそうだ。

 - 読書

スポンサーリンク

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

  関連記事

感想:魔法の世紀

著者:落合陽一 ★★★★☆ Kindleセールの時に購入。面白い本は1000円台 …

感想:ルームシェア(小説)

気づいたら研究室に置いてあって,誰が持ってきたのか未だに謎な本書。せっかくなんで …

感想:おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?

著者:池上 彰 ★★★☆☆ 教養とは「自分を知ること」。もう少し広げると、自分は …

感想:「育休世代」のジレンマ~女性活用はなぜ失敗するのか?~

著者:中野 円佳 ★★★☆☆ 修士論文を本にしたものらしい。それだけを聞くと博士 …

感想:下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

著者:藤田孝典 ★★☆☆☆ 下流老人とは、生活保護相当で暮らす高齢者のこと、と著 …

感想:ホイホイ記憶術

1976年に発売されたベストセラーの復刻版がamazon Kindleで100円 …

感想:永遠の旅行者(上)

著者:橘 玲 ★★☆☆☆ 同著者のマネーロンダリングを読んでから読むとかなり微妙 …

感想:日本人というリスク

著者:橘玲 ★★★★☆  橘氏の2冊目の本。1冊目の臆病者の株式投資入門を読んで …

感想:レインツリーの国

著者:有川 浩 ★★★★☆ 有川さんって女性だったんですね。あとがきで,私の夫っ …

感想:仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか

著者:筒井 淳也 ★★★★☆ 同著の感想:結婚と家族のこれから~共働き社会の限界 …