感想:日本人というリスク
著者:橘玲
★★★★☆
橘氏の2冊目の本。1冊目の臆病者の株式投資入門を読んで,いっきに著者に惹かれてしまい,2冊目を読むことに。どんな本でもよかったのが,タイトル的に自分も日本人だし知っておいて損はないかなと思ったので。はやり,橘氏の経済や投資に関する考えはわかり易く面白い。
①マイホームを買い,②同じ会社に定年まで働き,③銀行に貯金(円資産)し,④国が老後は年金で面倒を見てくれる。
この4つのことを,理想としている日本人がいまだに多く,この4つのことは人生設計をする上で,いまやすごい大きなリスクとなってしまっていることを掲げている。この理想モデルが通用したのは,高度経済成長期だけで,いまやすでに破綻しかけである。
確かに,終身雇用が崩壊していることは,大手企業のリストラや,派遣社員の増加などで身近に感じられている。そのほかにも年金なども何も知らない子供でもなんとなく世代間格差があることなどを知っている。そんな風に,なんとなく知っているわかっていることも多いが,お金を中心とした人生設計において,この4つのリスクに対して,論理的に書かれていてすごく参考になった。
収益還元法によって,賃貸の賃料から,不動産価格を逆算できる。
月額家賃4万円のワンルームマンションなら適正価格は1000万円,家賃20万円の分譲マンションなら5000万円になるらしい。これから家を買うかどうかの選択を迫られる場面もあると思われるので,これは参考にしたいと思った。同著者の別の本で書かれていたが,賃貸と持ち家,どちらがいいかに対する絶対的な答えはないそうだ。確かに絶対的な答えがあればみんなそうして,どちらかが存在しないことになるはず。市場の効率化?という考え方は面白い。
人的資本 と 金融資本 以外でお金を稼ぐ方法はない。
人的資本は,自分という労働力を市場に投資して,賃金という形で配当を得るというもの。要するに普通のサラリーマンとかアルバイトとか。人的資本と書けば,学生のころの勉強や,英語学習などを,自分への投資というが,しっくりくる。
一方で,金融資本が,資本主義社会でよくいわれるお金に働いてもらうというやつで,要するに株などに投資してその利回りや配当で収入を得るもの。
誰もが最後には金融資本しか収入がなくなるということ
年金も金融資本に含まれることや,老後は働けなくなり,人的資本がゼロになるので,生活をしていく上では,金融資本で収入を得るしかなくなる。若いときにとりあえず働いて,老後は年金があるから大丈夫やろ,みたいな考えでは危ないのかもしれない。長生きするリスクという言葉をよく耳にするのはそういうことだ。そんな将来をみて高尚な考えに基づき,投資などの勉強をしているわけではないが,ギャンブルや投機的な投資を行っている自分を少しでも正当化したい気持ちがあるのだろう。長期的な視点に広げていきたいものだが,難しい。
クリエイティブクラス(クリエイターとスペシャリスト)とマックジョブクラスで仕事は分類できる。
差は誰でも出来るかことかできないことかの違い。マクドナルドのマニュアル化されたバイトの仕事と,いわゆる総合職の仕事みたいな感じ。そして,クリエイティブクラスには,クリエイターとスペシャリストがあって,スペシャリストは大手会社の総合職みたいなもので,クリエイターは芸能人とかスポーツ選手とか芸術家とか。要するに,お金を稼ぐ上で上限があるかどうか。しょせん会社の正社員では,出来る仕事量は1日24時間で限られていて,芸能人なら,映画出演すれば,1本でヒットすれば,世界中で放映されて,その仕事は際限がないということ。
この3つのクラスの分類には関心した。マックジョブを批判しているわけではなく,マックジョブは仕事は誰でもできるので給料はもちろん低いが,責任などの負担が少なく,気軽にできる。で,その収入は,クリエイターはロングテールで,その他はベルカーブに従う。ベルカーブというのは正規表現で,まあ個人差はあるものの,平均値に収束されているような形になる。一方で,ロングテールは,ほんの一握りの稼ぐ人がいて,その他大勢が見えないところに広がっている。別にこれを知ってどうこうはないが,ただただへぇと思った。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
関連記事
-
『ここらで広告コピーの本当の話をします。 宣伝会議』 広告コピーに関係する人でなくても読む価値あり
すごい人が書いた本はすごい! PlayStationなどの広告クリエイターとして …
-
感想:探偵の探偵(小説)
2015年7月から北川景子主演でドラマ化されることを,読み終えてから気づきました …
-
初心者ランナーのための『ランニングの作法』―故障を防いで楽しくランニングを続ける
フィジカルトレーナーであり,専門分野がスポーツ障害の予防である著者が,ランニング …
-
感想:夢を売る男
著者:百田直樹 ★★★★☆ 面白いか面白くないかでいえば,普通に面白かったと思う …
-
感想:博士の愛した数式(小説)
著者:小川 洋子 ★★★☆☆ 映画化とかでけっこうな人気だったので,気になってい …
-
幸福の計算式 結婚初年度の「幸福」の値段は2500万円!?
著者:ニック・ ポータヴィー 訳:阿部 直子 ★★★★★ 気づいたらまた外国人の …
-
感想:ルームシェア(小説)
気づいたら研究室に置いてあって,誰が持ってきたのか未だに謎な本書。せっかくなんで …
-
感想:生命保険のカラクリ
著者:岩瀬 大輔 ★★★☆☆ 一般人が一般人向けにかいた保険の本らしいです。とい …
-
感想:ヒトはおかしな肉食動物 生き物としての人類を考える
著者:高橋 迪雄 ★★★★☆ ポップなタイトルや表紙絵に反して、中身はすごく濃く …
-
感想:人生を面白くする 本物の教養
著者:出口治明 ★★★☆☆ 普通だった。可もなく不可もなく。これを読んでもいまい …
- PREV
- 感想:下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)
- NEXT
- 2015年の振り返りと2016年の抱負