感想:ヤバい統計学
★★★★☆
統計学の入門と表されている本書。社会でどのように統計学が使われているかが書かれたエッセイ。数学的な回帰分析とかはなく,あくまでも,統計学的考え方を文章で説明している。
恐らくだが,理系学生や,研究職技術職の人は,知らず知らずのうちに統計学的考え方が私を含め身についていると思う。あるデータがあるときに,誤差や偏差を自然と考えるなど…。
だが,社会でどのように用いられているかの内容は参考になった。しかし,統計学を説明するにあたり,かなり冗長な表現が多かったように感じる。読んでて長く感じた。
要約すると,大きく5テーマに分かれる。
1.平均化を嫌う不満分身―常に「ばらつき」に注目する
統計学の基本らしい。今日の社会では,「平均」というものが多すぎることに言及し,誰もが,その裏に隠れた「ばらつき」を考えず,平然と平均を語っていると述べられていた,気がする。
ディズニーランドの待ち時間や,渋滞時間等が例に上がっていた。詳しい内容は忘れてしまった。ディズニーのファストパスに関して,その場にいないだけで,並んでいることには変わりないということは頭から抜けてしまっていた。
2.間違っているからこそわかること―真実より実用性を優先させる
食中毒の原因解明に統計学が役立っていたことの紹介。
因果関係を重視するか,無視して統計学的に取り組むか,対照的な二例が挙げられていたが,忘れてしまった…。
3.グループ分けのジレンマ―似た者同士を比べる
アメリカの高校生の学力調査テストをすると,白人グループが黒人グループより10%以上の差をつけて,成績がよかった。なぜなかの?統計学的にひもといていく。
結局,白人は比較的裕福で,勉強できる率が高く,黒人はその率が低い。全体同士で比べてしまうと,差が出るのは当然。勉強できる白人と黒人を比べないと意味がないという当然の結論。
差をなくすために,ダミーを用意して,実地テストをしてから,本試験に出すという手法は興味深かった。
4.非対称がもたらす動揺―2種類の間違いの相互作用に注意する
ドーピング検査や嘘発見機は100%正しい結果を返すとは限らない。
一般的に,精度が100%なものなんてなく,100%でないなら,ドーピング検査に関しては,使っていないアスリートが使ってると判定され,人生が終わると…ここまでは誰もが考える。しかし,その裏を考える人は少ない。本当は使っているが,使っていないと判定されることもあるということ,そして,そういう判定される人数が前者に比べ圧倒的に多いということ。精度99%ぐらいで計算してみたらいいだろう。
5.「不可能」が起きるとき―まれすぎる事象を信じない。
統計学において,飛行機が墜落するや,宝くじに当たる(ともに確率が1000万分の1ぐらいらしい)というほとんど起きない事象に関しては,起きないものをして扱うらしい。逆に考えると,ありあえない確率のことが起きていたら,そこには何かあると…。そういう視点は大切だろう。
リスク・ベネフィットの考えにも似ていると思った。車の利便性と事故の確率がいい例だろう。
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