『「自己啓発」は私を啓発しない』 小説的な読み物として面白かった
某ブログで自己啓発の本読むならこれだけ読んどけばいいよ,と紹介されていたので読んでみました。この本は体験談をもとに話が進みますが,事実は小説よりも奇なりといわれるように,すごい体験をされている方もいるんだなぁ。
この本は,自己啓発本なのか,はたまた,エッセイなのか,いまいちジャンルが分かりません。個人的に読み物として大変面白かったので,ノンフィクション小説あたりがしっくりくるかもしれません。
あまりにもうまく実体験話が入ってくるので,若干作り話っぽい雰囲気なところもありますが…。ここまで綺麗に内容をまとめてくれると,あまり関係ないですね。2ちゃんねるに投稿される内容の真偽を問うぐらい馬鹿らしいです。
自己啓発セミナーが流行しハマる人がでる理由
著者は自己啓発の中でも,自己啓発セミナーにはまった典型例として登場します。私は,セミナーとか参加したことないのですが,この本を読むと本当にカルト宗教みたいだなと思いました。集団心理を巧みに利用して,著者みたいな人をくいものにしている感がひしひし伝わってきました。
全てのセミナーがカルト宗教じみているわけではなく,一部なのでしょうが,そういった強引な心理操作を抜いても,セミナーに集まる人々は,現状を良くしたい意識の高い人が多く,そういう人たちは,笑顔を絶やさずや他人を思いやるなど,いわゆる”いいこと”を実践し自己を高める傾向にあるらしいです。その人たちだけでコミュニケーションを取るわけですから,必然的に,すごく雰囲気のよく居心地の良い空間が出来上がり,うまくいっていない現状(仕事や人間関係)とのギャップから,自己啓発セミナーに知らず知らずのうちにはまってしまうというもの。
カルト宗教の原理
1.隔離する
外界から隔離するとこにより,不安感を煽ったり,気持ちが揺れ動きやすい状況を作り上げる。セミナーでは,窓のない部屋など。
2.これまでの生き方を全否定する
講師1人から全否定されるだけでなく,集団を利用して,集団からも全否定される状況を作ると,隔離効果も二重に働き効果的
3.救いを授ける
全否定された後,唯一の答えを示されると,それを信じざるをえない状況になる。
一回,大学構内でのカルト宗教の勧誘に関して,暇つぶし程度の軽い考えで,参加しようかなと思ってたことがあるのですが,理論的に考えると,怖いですね。結局遊びですらやめとけと友人に言われたので,参加はしなくて実際のところはわかりませんが,この3段階の状況をうまく作られると,本当に洗脳されるような気もしてきました。
なぜ著者は成功者となれたか?
さて,著者は,この本をはじめ,たくさんの本を出版し,年200回もの講演をするほどの成功者になっています。
本を読んで,何が成功の秘訣かと考えると,積極性(行動力),真面目さ,運が挙げられるのではないでしょうか。自己啓発の教材やセミナーで600万もつぎ込んだことを失敗としていますが,どんなに愚直な理由であれ,目的を持ち,数々のセミナーに参加していたということは,失敗などではなく,誇れる経験であると思います。詐欺まがいなものにひかかったりとかは失敗だと思いますが。
あと,1個人が成功するには,どうしても”パーソナルブランディング”は必須なようですね。それに至るまでには,運がとてつもなく必要だということも認識しました。
メモ
人は相手が言っていることが合っているかどうかで聞き入れるかどうかを決めるわけではなく,人柄や見た目など,総合的にひっくるめて判断をする,一言でいえば”ひいきする生き物”であるということ。
むしろ,仕事で大事なのは,「目」と「耳」を使うこと。すなわち,自分からアクションを起こすのではなく,お客様の反応をジーッと観察して,喜んでいただいていることに関してはもっとやる,喜んでいただいていないことは引っ込めるというような,受身の姿勢なのだと思うのです。
成功する人は限られている。プロ野球選手に誰でもなれるわけでないことを同じ。
セミナーで教えている内容は,「正しいか間違っているか」ではなく,「自分に合っているか合っていないか」という視点で聞く。
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