『重力とは何か』ニュートン,アインシュンタイン,量子力学と物理学の歴史をわかりやすく紹介している良書でもあった
インターステラーという映画内で,重力の謎が解ければ,宇宙の真理を理解でき,地球から新しい惑星に移住できるようになる,的なことがありました。あまりにも私たちの周りにありふれ,特に意識もしない”重力”,それが何故,宇宙の真理につながるのかわかりませんでした。
そんな興味があった中,本書のタイトル『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』にすごく惹かれました。
基礎物理学の歴史を紐解くような流れのストーリー
重力をテーマとしつつも,最新の重力の研究を紹介するだけでは,理解できる読者は専門知識を有している人だけになってしまいます。そこで,本書はニュートンの古典力学の基礎物理学の起こりから始まります。アインシュタインの特殊相対性理論,一般相対性理論,量子力学論,超弦理論と物理学の歴史を紐解くように,内容が進んでいくところには心惹かれました。
もちろん,新書であって,専門書ではないので,難しい計算式などは一切なく(出てくる式はかの有名なE=mc^2だけ),文系の人でも理解できるように書かれています。あとがきにも以下のようなことが書かれていました。
本書を書くときに思い浮かべたのは,卒業以来会っていない高校の同窓生でした。私とは違う道に進み科学からは遠ざかっているものの,好奇心は相変わらず旺盛で,筋道だてて説き起こしていけば理解してくれる。そんな友人に30年ぶりに再会して,私が大学で勉強し,大学院で研究をはじめ,今日まで考えてきたことを語るつもりで書きました。
説明がわかりやすい
著者の経歴もすごいです。本当にこの分野の第一線で活躍されている著者が,重力に関して,ここまでわかりやすい文章に落としこめていることもさらにすごい。
最近の研究は,長さのスケールでいっても,長いものでも短いものは「10億×10億×10億」のスケールの単位の話です。私たちの理解しやすい単純な長さであっても,長すぎて短すぎて,ピンとこないっていうのが正直な印象じゃないのでしょうか?そんな中,空間がゆがむ,時間の進み方が違う,宇宙は10次元と考えられる,もやは一般人には理解不能であるようなことを,巧みな例を交え説明してくれます。
特に次元に関する考え方は,参考になりました。3次元の世界で生活しているので,3次元以上の高次元は観測できないし,感じることもできないのは当然なのですが,2次元の世界ではどうなのかを仮定し,それを3次元に拡張する。言われてみれば簡単な次元落しの考え方なのですが,それをうまく説明しているのにも感心しました。
本当にわかり易く,知的好奇心を刺激され,読み始めると止まらない,そんな本でした。
最新の研究の紹介らへんになると,まだ確定している理論ではないので,説明が若干わかりづらく感じたり,今考えられ想定される結論など,ニュートンやアインシュタインからの流れを見ると,ちょっとがっかりな終わり方を感じてしまいました。
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